「ヤフーの1on1」、「1on1ミーティング」を読んでの感想
本を読もうと思ったきっかけ
先日、チーム内で「1on1をやろう」という話になったので、
- ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法
- 1 on 1ミーティング 「対話の質」が組織の強さを決める
の2冊を読んだ。
その部署は、100人強のエンジニアが所属する部署で、コロナの影響もあり、コミュニケーションが減っている、人とのつながりが減っている、という課題感があり、部内の人事育成を担当するメンバー(4人程度)で、「1on1をやろう」という話になった。で、そもそも「1on1」の定義が曖昧だと、部署の全員に「1on1をやろう」という働きかけができないので、まずは、本を読んで、定義を合わせようとなった。なお、外部の講師を雇って、研修をしてもらう、というアプローチもあるが、研修に参加しない人も出てくるので、まずは「本を読む」というのがいいと考えた。
なお、3年ほど前に、他の会社(Google, リクルート)に転職していった後輩と飲んだ際に、
- リクルートでも、Googleでも、週に1回、30分、上長と話す機会がある
- 基本、雑談になるが、好きなことを話せる
- 転職したばかりで、不安があったり、わからないことがあったりするので、この営みはかなり助かっている
- 毎週、話すと、雑談のネタもなくなっているが、雑談がない中で振り絞って話すからこそ、構築できる関係性があるのでは、という気がしている
- 〇〇さん(私の名前)も絶対にやったほうがいいですよ!!!
と教えてくれたのが、かなり心に残っていて、今、思うと、あれは「1on1」のことを言っていたんだな〜と思う。なお、その時は、「今更、自分のチームのメンバーに、毎週30分、面談やるよ」というのは恥ずかしいなと思った記憶がある。その飲み会の直後に、1年間の海外留学をしたので、恥ずかしいと思いつつ、それでも実施したのか、結局、実施しなかったのかは謎のままだが、おそらく実施しなかったと思う。
この「今更、…」という気持ちは、根深いのだろうなと思う。とは言え、今なら、海外留学での経験や帰国後の試行錯誤の経験もあり、「それでもやらないと」と少しは思えるとは思う。
2冊の本の内容
で、肝心の本の内容だが、個人的に「なるほどな」と思ったのは、以下の点だった:
- 1on1の前は、上司も部下もコミュニケーションを取りたいと思っていたが、きっかけがなかった。1on1が良いきっかけとなった。
- 「毎週1回30分」という時間が確保されていることが大事。不定期では意味がない。
- 頻度が大事であり、15分でもいいので、毎週行う方がよい。
- Yahooのような業界では、上司が部下に正解を教えることができず、上司と部下とが、ともにより確からしいものを探す必要がある。その際に1on1は真価を発揮する。
- 部下に「見ている」と伝えることが大事であり、1on1は「見ている」と伝えることができる
- 雑談でもいいが、できれば、部下が話すテーマを決め、上司は、部下が話すことに対して、壁打ちの壁になることを心がける
- 管理職同士でピア・コーチングを行うのもよい。なぜなら、リモートワークも増えて、管理職間のコミュニケーションも減っているから
この2冊の本を読んだ今なら、Googleやリクルートに転職していった後輩の「絶対やったほうがいいですよ」というのは、より深く理解できる気がする。チーム内のコミュニケーションに課題を感じている方は、ぜひ、この2冊を読み、かつ、チーム内で実践してみることをお薦めする。
※ と言いつつ、このエントリーを書いている時点で、私自身は、まだ自チームでの実施をしていないが… (GWに読み、かつ、まだGW中なので、チームメンバーと話す機会がない…)
自チームで始める場合のトピック
自チームで始める場合には、
- 話すテーマは部下に考えてもらう。上司は「今日は何の話をしましょうか?」から始める
というのが一番大事では?という気がする。
また、部下としては、急に「何か話して」と言われても、何を話していいかよくわからないということもあると思うので、サンプルとして、以下を提示するのがよいと思う:
- 普段の業務で気になっていること(← これをメインとする)
- チームの課題
- チームの5年後のあるべき姿
- やりたいこと、やりたくないこと
- キャリア
- …
(追記)1on1を行う上で注意すべきこと
先日、ある会社から1on1のレクチャーを受けた。「1on1のやり方を教える」ということを生業にしているだけあって、わかりやすく教えていただいたので、そのポイントをいくつか書いておきたい。
1on1を導入しようと思ったときに障害になる企業文化/マインドとは?
レクチャーをしていただいた会社は、1on1の導入を支援する会社であり、「1on1を導入しようと思った時に、何が障害になるか」について、わかりやすく説明してくれた:
- 問題のある企業文化/マインド
- 部下は、上司の指示通りに動くべき
- 上司は、部下に指示を与えるべき。部下に正解を与えるべき
また、そのような企業/チームは、1on1を通して、以下のような企業文化/マインドを目指すべきとのこと:
- 1on1を通して目指すべき企業文化/マインド
- 部下は、自ら自分の課題に気づき、自ら自分の課題解決方法を考え、主体的に行動に移せる人材
- 上司は、部下に課題を気づかせ、解決方法を考えさせ、行動する勇気を与える
私が所属するチームはすでに1on1を始めているが、新しいチームで1on1を始める場合には、このような視点でそのチームを見た上で、どのようにして1on1を始めるべきかを考えるのは有効そうだなと思う。
1on1の3つのStage
一般的に、何かに習熟するためには、自分のレベルを客観的に測定することが重要だと思う。人間は、測定値を見るからこそ、より良くしていこうと思う生き物だと思う。
で、1on1には、以下の3つのStageがあるとのこと:
- Stage 1: 聞き手(上司)が話してしまう、指示してしまう
- Stage 2: 聞き手(上司)は、話して(部下)の話を聴く、傾聴する
- 聞き手は、話し手に適切なフィードバックができず、組織が緩むと感じてしまう場合がある。ただ、ここは通過点と思うべき。
- Stage 3: 聞き手は、話し手の話を聴き、内省を促す。
- 経験学習という理論(経験を通じて、自分で考えることで成長する)
- 話し手は、仕事で上手くいかないことを自律的に考え、相談し始める
自分の1on1がどのStageにあるかを意識してみるといいのでは、と思った。
細かいTips
以下に、1on1を行う上で、聞き手(上司)が上手く答えにくいケースを3つほど集めてみた:
Case 1:
- Aさん(部下): この問題について、Bさん(上司)はどう思いますか?
- Bさん(上司):
- 良い例: 私の意見は後で言うとして、まずはAさんの考えを聞きたい
- 悪い例 1: 私は○○だと思うよ
- 悪い例 2: Aさんはどう思う?(質問に質問で返す)
Case 2:
- Aさん(部下): あの会社の方針、イマイチですね。
- Bさん(上司):
- 良い例: あなたは、会社の方針に納得して仕事をしたいんだね
- 相手の気持ちを肯定する
- 悪い例 1: あれ、イマイチだよね
- 会社としては、肯定してはいけない
- 悪い例 2: あなたはそう思うんだね。でもさ~
- 相手を肯定しているように見えて、「でもさ~」が入ると台無し
- 良い例: あなたは、会社の方針に納得して仕事をしたいんだね
Case 3:
- Aさん(部下): 中間報告を怠ったため、スケジュールが遅れ、納期に間に合いませんでした。
- Bさん(上司)
- 良い例: その時、何を考えていた。どういう気持ちだった。何をしていたのか?
- 想い、気持ち、行動に焦点を当てる
- 悪い例: なんで中間報告を怠ったの?
- 「なんで?」と言われると言い訳を考えてしまう。
- 「なんで?」は基本NG
- 良い例: その時、何を考えていた。どういう気持ちだった。何をしていたのか?
こういういくつかの良い例/悪い例を認識した上で、自らの1on1を振り返るのは有益ではと思った。
とりあえず、「なんで?」は使ってそうだなと思った。以後、注意したい…
(改めての)1on1の価値とは?
最後に、このレクチャーを通して、改めて感じた1on1の価値やポイントを以下にまとめてみた:
- 聞き手は、沈黙を恐れない。話し手が沈黙するのは、内省を始めたサイン。我慢して待つ。
- 我慢できず、話しかけるのは逆効果。
- 聞き手は、考えを聞かずに、気持ちを聞く。
- 人は、考えには正解があると思うが、気持ちに正解はないと思う
- 要するに、内省/Reflectionをいかに促すか?
- ヒトは、何かに挑戦し、それを内省することでのみ成長する
- 振り返りが重要
- 1on1(成長)とは、自らの価値観を明らかにし、世の中にあった価値観にUpdateしていく営み